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2015.01.26

アルバム「HIGHWIRE WALKER」 へのクリエイター、ミュージシャンの皆様からのコメント vol.01

最新のものが最高のもの。出来上がって届いたサンプル盤を沁々と聴いた夜、ジャケットを眺めブックレットを手に取りページを開いてデザインを隅々まで確認して、中野裕之監督に写真をお願いし、ロケーションも横浜にして本当に良かったと思う。気持ちや空気が真摯にきちんと写り込んで、ほんの少しのユーモアとスチールでありながらムービーなテイストは得難い香りだ。アルバムの中に、ミュージシャンとしての日常を携えてなお、飾り気の無い素直な表情の二人がいる。サウンドの非日常的な奥行きを、写真の二人が現実に引き戻してくれる。ところが、その現実性こそが気持ちの良い夢で幻だ。ジンガロの馬と乗り手の関係のように、協調と微かな反目と緊張、そしてくるくると回転する主従。時代や流行の内側の、激しい渦の速度にアルカイックな微笑みをくれながら、サーカスのテントの中で見る静かな夢と幻が奏でる唯一無二の二人の音楽。僕らは毎日知らず知らずに綱渡りをしている。二人の音楽を聴いていると、綱から落ちることは無いと知る。

ミック・イタヤ
ビジュアルアーティスト


懐が深く、柔和で、神秘的。木村さんの人となりそのもの。
Divineな印象の甲田さんが、実は現実に繋ぎとめるような役割を果たされているように思える。

もちろんお二人を個人的に知らなくても、優しく穏やかな気持ちになれる。
僕の考えるクールジャパン。

安田寿之
ミュージシャン


とても優しくて孤独で美しい世界だなという印象です。
一言で例えれば大人の絵本と思いました。
最初の印象と今も変わらないのですが、Womanという曲が得に好きです。
ライブで拝見するのが楽しみです!
甲田さんのお声に包まれに行きたいです!

Language Vo, Kaori
ミュージシャン


dipと僕のお話

最初に六本木のスタジオでdip in the pool の二人と出会った時になんて甲田さんは子鹿みたいな人なんだろうって思い、
先日横浜で撮影した時もそう思った。たぶん、ずっと子鹿なんだろう。

木村くんは神経質そうに眉間をよせてしゃべる癖があるから神経質かって言うとけっこう案外にずぼらなんじゃないかって
想像できるような素敵な笑顔の持ち主で、その笑顔があるからこの二人はずっと大学から今までdipを続けていられたのではないかと思う。
そして、木村君のその笑顔を撮れたので僕はとても嬉しかった。
そしてそれが表に出るのは多分始めての事だし、木村君の優しい本質が公になってそれもうれしい。
CDの表ジャケットのインナースリーブの裏にある写真だ。

撮影が大好きな二人はっていうか、撮影が好きな甲田さんはアートデイレクターのミック・イタヤさんからの 
”普段の素の二人を今回は撮影したいから私服でね”っていうのなんかもちろん無視して(笑)知人のデザイナーから
たくさん洋服を借りて持って来たからそれを運んで撮影場所を探して撮影するという、普通の撮影になってしまった。
その途中にこそ素があるんだけど荷物がじゃま(笑)

僕は映像作家だから撮影もする。その初めての被写体がdipだった。
国内外の超有名巨匠カメラマンに撮影されてきた二人を2曲目のMVで初心者の僕が16mmフイルムで撮影したのだ。
ベースに佐久間正英さんを迎えての3ピースのバンドスタイルでの撮影だった。
最初のクリップは与田弘志さんが動く写真集っていうデイレクションをそのままやってくださって一枚一枚の写真が動いていた素晴らしい動画だった。
正直僕はヘタクソだった。その差は1万対1くらいに僕はヘタクソだった。
それでも被写体がいいから奇跡のような素敵なカットもあったのでなんとか形になったけど、
編集室で、ヘタクソだなぁこのカメラマン、って何度言ったことか。
そんな初心者の僕にチャンスをくれたdipのおかげで僕はその後ずっと撮影編集監督というスタイルをやってこれた。

レティニーって曲は8ミリフイルムカメラを買ったのでそれで撮った。どこで撮ったかも覚えてないけど、甲田さんが子鹿らしくはねていた。
クリスマスの曲はレコード会社から、dipの二人がロンドンで撮って来た8ミリビデオがあるんだけど中野君、これで作れないかな、って言われて
使えるところが少ししかなかったのでウルトラにスローにして編集したのをよく覚えている。
昔のビデオカメラは映像が溶ける現象があってそれが気持ちよかった。色々とdipのMVには思い出がつまっている。
鎌倉で撮ったやつも僕にしては初めて普通の場所を背景にして撮影というパターンで、
その頃は、グラフィックとかきれいとかスタジオみたいな、背景だけをどこでも切り取って撮影するという目しか持っていなかった。
でも二人は普通の街を背景にしてもやはり絵になるのだった。
それにはとても感心したし、それでやっと現代劇の映画が撮れるようになった。

2012年に与田さんのスタジオをお借りして与田さんがなんとアシスタントで甲田さんを撮影した。
やっぱり美しかった。与田さんの光がさらにそうさせたのだけど。
美しいというのは、どんなに歳を重ねても内面からにじみ出てくるものだから子鹿の甲田さんは一生美しいだろう、
そしてその子鹿のそばに笑顔でいる木村君が想像できるからとても嬉しく思う。

映像作家 映画監督 中野裕之



「HIGHWIRE WALKER」を聴きながら、私は、なんとなく1954年のフェデリコ・フェリーニ監督の「道」というイタリア映画を思い出していました。
リアリズムでありつつファンタジーの要素も色濃く、愉しげで哀しく、心寂しくて温かい。dip in the poolの音楽は「現実」と「幻」を自在に巡る。
現実世界の波間に溺れそうになりながら、追われるように先へ進み続ける私たち。
一日の終わりに「HIGHWIRE WALKER」を聴いて、現実と幻の間を夢見るように旅してみませんか?

本田みちよ(MUSIC SHARE代表・KANADe)
ミュージシャン

*vol.02へ続く