ジュエル通信
Vol.6
池間さんの作曲をよみがえらせること
From キングのAさん(元担当ディレクター)
またしても皆さんに少しの時間をいただき、今回はこの企画アルバムの肝となった新曲制作のことをお伝えします。
今回のアルバムは当初、40年にわたる小森さんの歌手活動の音源をベスト選曲して収録し、より身近にその歌声を届けることを目的としていました。
しかし、既存楽曲を並べ直してリリースするだけでは、どうしても魅力に欠けることから、何かしら新しいエッセンスを加えることも必要と感じていました。
40周年を記念する何か特別な新曲を制作することができるか?
そのために小森さんの≪やる気スイッチ≫をしっかりと押せる提案が出来るか?が、一つの課題かなとも思っていました。
また昔の話になりますが、私が小森さんの仕事に携わり始めたのは多分1994年ごろ、ベスト盤『Birth』の制作においてだったと思います。(DAISUKIリスナーコーラス隊のみなさんとキングレコードのスタジオでコーラス収録をおこないましたね。)
そしてその編成作業において、作曲家・池間史規さんのお名前と楽曲が多く選ばれており、池間さんが手掛けるサウンドが多くのリスナーやファンに支持されている事実に気づきました。
そして何よりも、小森さん自身が、池間さんのことを深く信頼して、作られた詞を託していたことを知ったのです。
Courageの制作時、アルバムの骨子となった楽曲「YELLを君に!」は、最初から池間さんに作曲を依頼したのではなく、実は多くの作曲家が参加するコンペ形式でした。
小森さんを始め、プロデューサーの丸尾めぐみさん、私、BOSS是枝さんを加えた制作に関わるスタッフの協議の上、最終的に池間さんのメロディを採用することになったのは、今でも忘れることが出来ない記憶となっています。
メッセージ性の高い小森さんの詞は言葉数が多く、うまくメロディに乗せるのが難しいのですが、池間さんのメロディはそれを上手く消化してくれるのです。
さて、時は戻ります。
単なるベスト盤を越える作品づくりをする、という自分自身のチャレンジとして、当時を振り返った時、もう一度、池間さんのメロディと向き合いたいと直感的に感じました。
そして、プロジェクトの会議で、池間さんが残されたアウトテイクの捜索をし、新たな楽曲として制作を行いたいという気持ちを小森さんに伝えました。
このような提案を受け止めてもらえたことは、大変嬉しいことでもありましたが、また無理な課題を立ち上げたものだとも思っています。
楽曲のサルベージに関しては、果たして、曲として形が整っているのかなど、大変心配でしたが、小森さんの心の中にずっと眠っていたメロディを聴くことが出来たとき、改めて、小森さんと池間さんの中に流れる想いや時間にギャップは無く、今も共に生き続けているのだなと感じました。
Courageのサウンドプロデューサーを務めた丸尾めぐみさんは、「小森さんの楽曲は、シャンソンなんだよ。だから、この詞でなきゃダメだし、その気持ちを受け止めるには、その意図を汲める池間さんの楽曲なんだよ。」と言っていたのを思い出しました。
この楽曲は、受験生を応援する楽曲にしようと二人が電話口で、詞とメロディを伝えあい制作していたものだったとお聞きしています。
そのメロディに、今回新たな詞が載せられます。
2人の制作は小森さんの詞にあわせて池間さんが曲を載せていくスタイルだったので、今回生まれた新たな詞に対しても、池間さんは更なるアプローチを行ったのではないか、など想像が掻き立てられます。
まさに現在、アレンジの方向性など制作途中であり、その全貌をお聞かせすることは難しい状況です。
しかし、楽曲が出来上がった際には、小森まなみに纏わる皆さんの想いが、眠っていた楽曲に新たな光を当てることとなった、この機会を皆さんと共有出来ればうれしく感じます。
今回もお付き合いいただきありがとうございました。
キングレコード 元担当 A